認証とDNS
メールのなりすまし(スプーフィング)
メールのなりすまし(スプーフィング)とは、偽の送信者アドレスでメールを送り、別の人から届いたように見せることです。詐欺師は、銀行、取引先、あるいは受信者の上司になりすますために使います。ドメインでこれを防ぐのが、SPF、DKIM、DMARCのレコードです。
メールのなりすましとは?
メールのなりすまし(スプーフィング)とは、偽りの送信者アドレスでメールを送ることです。メールは、知っている人や会社から届いたように見えます。実際には、別の誰かが送っています。詐欺師はなりすましを使って、偽の請求書を支払わせたり、パスワードを聞き出したり、有害なファイルを開かせたりします。
なりすましのメールは、Fromの行に本物のアドレスを表示します。Fromの行とは、受信トレイに表示される送信者の名前とアドレスです。この点が、よく似た別のアドレスから送られたメールとの違いです。どちらについても、以下で説明します。
例:CEOを装った偽のメール
サラは、example.comというドメインを使う会社の経理部で働いています。ドメインとは、メールアドレスの @ より後ろの名前です。金曜日の午後4時、サラに次のメールが届きます。
- From:David Brown、david.brown@example.com
- 件名:本日中の至急の支払い
- 本文:「添付の請求書を、午後5時までに新しい取引先へ支払ってください。会議中なので、返信はメールだけでお願いします。」
David Brownは本物のCEOで、アドレスも本人の本物のアドレスです。しかし、このメールを送ったのはデイビッドではありません。example.comとは関係のないサーバーから、詐欺師が送ったものです。
サラが支払うと、お金は詐欺師の銀行口座に入ります。この種の詐欺は、ビジネスメール詐欺(BEC)と呼ばれることがよくあります。メールが普段どおりに見え、急ぐように求めてくるので、だまされてしまいます。
メールでなりすましができる理由
SMTPは、サーバー間でメールを送るためのプロトコルです。最初に定められたのは1982年です。SMTPはFromアドレスを確認しません。どのメールサーバーでも、その行に好きなアドレスを書くよう設定でき、それでもメールは送られます。
そのため、受信側のサーバーには、Fromアドレスが本物かどうかを知る仕組みが元々ありません。これが、後から3つのチェックが追加された理由です。ドメインの所有者は、これらをDNSに公開します。DNSとは、ドメインが自分の設定を載せる、インターネット上の公開ディレクトリです。
なりすましメールの見分け方
なりすましのメールは、細かい点まですべて正しく見えることがあります。次のサインが見分ける手がかりになります。
- Reply-Toのアドレスが違う。「返信」をクリックして、アドレスを見てください。知らないアドレスに変わる場合、そのメールは偽物かもしれません。
- チェックに失敗している。Gmailでメールを開き、3つの点をクリックして「メッセージのソースを表示」を選びます。SPF、DKIM、DMARCの行を見てください。DMARCがFAILなら、強い警告のサインです。
- お金やパスワードを急いで求めている。今日中の支払い、振込先口座の変更、ログインの依頼は、なりすましメールのよくある目的です。
- ほかの連絡手段を使わないよう求めている。「メールだけで」「電話はしないで」は警告のサインです。
- 文体や署名がいつもと違う。本人なら、そのような書き方はしないかもしれません。
ドメインをなりすましから守る方法
誰かがFromの行にあなたのアドレスを入力するのを止めることはできません。そのようなメールをブロックするよう、受信側のサーバーに伝えることはできます。それには3つのDNSレコードが必要です。
- SPFは、ドメインのメールを送ってよいサーバーを一覧にします。SPFレコードを参照してください。
- DKIMは、詐欺師には作れない署名を本物のメールに付けます。DKIMを参照してください。
- DMARCは、Fromにドメインを使っているのに両方のチェックに失敗したメールをどうするかを、受信側のサーバーに伝えます。DMARCを参照してください。
DMARCが p=reject なら、ポリシーに従う受信側は、なりすましのメールを誰かに届く前にブロックします。p=none では、DMARCはレポートを送るだけです。メールは止めません。DMARCに合格するには、Fromに表示されるドメインと同じドメインで、SPFかDKIMが合格する必要があります。これをDMARCアライメントと呼びます。
なりすまし、フィッシング、類似ドメインの違い
これらの言葉はよく混同されます。意味は異なります。
| 用語 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| メールのなりすまし | 許可なく、本物のアドレスをFromに使ったメール | From:billing@example.com、詐欺師が送信 |
| フィッシング | お金、データ、パスワードをだまし取ろうとするあらゆるメール | ログインリンク付きの、偽の「アカウントがロックされました」メール |
| 類似ドメイン | 本物に似せて登録された、別のドメイン | exampel.comやexample-billing.com |
なりすましはフィッシングの手口の1つで、類似ドメインも別の手口の1つです。DMARCは、自社のドメインそのもののなりすましを防ぎます。類似ドメインは防げません。そのドメインは詐欺師が所有しているので、SPF、DKIM、DMARCのレコードを自分で設定できるからです。
なりすましメールを受け取ったときの対処法
- 返信、リンクのクリック、添付ファイルを開くことはしないでください。
- 別の方法で依頼を確認します。メールに書かれた番号ではなく、すでに知っている電話番号で本人に電話します。
- 報告します。Gmailでは、3つの点のメニューから「フィッシングを報告」を選びます。Outlookでは「報告」ボタンを使います。
- 自社のドメインが使われている場合は、ITチームに伝えます。ITチームはDMARCのレポートを確認できます。
- すでに支払った場合やパスワードを伝えてしまった場合は、すぐに銀行に連絡するか、パスワードを変更します。
メールのなりすましとメールアドレス検証
メールアドレスチェッカーは、なりすましを検出しません。わかるのは、アドレスが存在してメールを受け付けるかどうかで、誰が実際にメッセージを送ったかではありません。なりすましのメールは本物のアドレスを使うので、そのアドレスは検証しても「有効」になります。メールアドレスの一括検証ツールが役立つのは自社の送信側で、キャンペーンの前にリストから使われていないアドレスを削除します。なりすましを防ぐにはSPF、DKIM、DMARCを使い、バウンス率を低く保つにはメールアドレス検証を使います。
関連する用語
- DMARCDMARCは、ドメインのDNSに公開するルールです。ドメインから送られたと名乗っているのにSPFとDKIMに失敗したメールを、どう扱うかを受信側のサーバーに伝えます。レポートの送り先も伝えます。
- SPFレコードSPFレコードとは、ドメイン上に置く1行のテキストで、そのドメインのメールを送ってよいサーバーを一覧にしたものです。受信側のサーバーはこれを確認し、ドメインから送られたと名乗るメールが、そのドメインのサーバーから送られたことを確かめます。
- DKIMDKIMはDomainKeys Identified Mailの略です。送るすべてのメールに電子署名を付けます。受信側のサーバーは署名を確認し、メールがそのドメインから送られ、送信後に変更されていないことを確かめます。
- BIMIBIMIは、対応している受信トレイで、メールの横にブランドのロゴを表示するメールの標準規格です。Brand Indicators for Message Identificationの略です。ドメインがquarantineかrejectのポリシーでDMARCに合格している場合にだけ機能します。
- Return-PathReturn-Pathとは、バウンスメッセージが送られる先のアドレスです。送信側のサーバーが設定し、受信トレイに表示されるFromアドレスとは異なることがよくあります。SPFはReturn-Pathのドメインを確認します。
